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福岡地方裁判所 昭和45年(わ)768号 判決

本籍

飯塚市大字目尾七七〇番地

住居

右同

会社役員

田中勇吉

大正一三年一月七日生

本店所在地

飯塚市大字目尾七七〇番地

商号

合資会社九州商工

代表者無限責任社員

田中勇吉

右被告人らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官任海一出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

一、 被告人田中勇吉を懲役五月に処する。

ただし本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予する。

二、 被告人合資会社九州商工を罰金五〇〇万円に処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人合資会社九州商工(昭和四五年三月一六日商号変更前は合資会社田中鉄工所)は、福岡県飯塚市大字目尾七七〇番地に本店を置き、製鉄用機械部品およびセメントサイロ用機械の製造販売を目的とする資本金二〇〇万円の会社で、被告人田中勇吉は、同社の代表者として同社の業務全般を総括しているものであるが、被告人会社の業務に関し、法人税をほ脱する目的をもって、

第一、昭和四一年一一月一日から昭和四二年一〇月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額は、四九一九万二、九六一円、これに対する法人税額は一六五六万六〇〇円であったにもかかわらず、売上の一部除外、架空仕入等の計上などし、これを簿外の仮名預金に預け入れるなどの不正手段により、その所得を秘匿したうえ、同年一二月三一日飯塚税務署長に対し所得金額は一三五一万三、八三四円で、法人税額は四〇九万二、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、正当な法人税額との差額一二四六万八、〇〇〇円をほ脱した。

第二、昭和四二年一一月一日から昭和四三年一〇月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額は五〇五〇万五、九二四円、これに対する法人税額は一六七四万四、〇〇〇円であったにもかかわらず、前同様の不正手段により、その所得を秘匿したうえ、同年一二月三〇日飯塚税務署長に対し所得金額は二六八八万一八三円で法人税額は八八四万三、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、正当な法人税額との差額八二六万九〇〇円をほ脱した、

ものである。

(証拠の標目)

判示第一、二の全事実につき

一、登記官作成の被告人会社の登記簿謄本

一、大蔵事務官米倉実作成の告発書

一、今川滋、有田克郎、石垣三郎、桑野清美、青木利安、横山瑞樹各作成の上申書

一、後藤輝生、野上清、伊藤俊次各作成の証明書

一、青木利安、稲富稔子、上妻雄、山本幾七の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、江藤文夫の検察官に対する供述調書

一、被告人作成の上申書(三通)、確認書(三通)ならびに大蔵事務官に対する質問てん末書(七通)および検察官に対する供述調書

一、押収してある田中鉄工所定款および附属書類一通(昭和四五年押第二三八号の一)、売上請求控一冊(同号の八)、ゴム印一二個(同号の一二の一乃至一二)

判示第一の事実につき

一、麻生太賀吉作成の上申書

一、江藤文夫の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、押収してある確定申告書一通(前同号の二)、元帳一冊(同号の四)、売掛帳一冊(同号の六)、請求書綴二冊(同号の九、一一)、領収書綴(同号の一〇)、賃金台帳(同号の一三)、銀行勘定帳一冊(同号の一五)、約束手形一通(同号の一六)

判示第二の事実につき

一、小原康孝、松下正男各作成の上申書

一、花田治雄の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、押収してある確定申告書一通(前同号の三)、元帳一冊(同号の五)、売掛台張一冊(同号の七)、金銭出納帳一冊(同号の一四)

(法令の適用)

被告人田中勇吉の判示第一、第二の各所為はいずれも法人税法一五九条一項、七四条一項二号に該当するので、所定刑中各懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役五月に処するが、諸般の事情を考慮し、同法二五条一項を適用して本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

つぎに判示第一、第二の各所為は被告会社の代表者である被告人田中勇吉が右被告会社の各業務に関しそれぞれ行なった違反行為であるから、法人税法一六四条一項に従い被告会社に対しそれぞれ同法一五九条一項の罰金を科すべきこととなるが、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で同被告会社を罰金五〇〇万円に処する。

よって主文のとおり判決する。

昭和四六年二月二日

(裁判官 秋吉重臣)

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